保存科学研究室は1966年に発足しました。東京藝術大学に大学院が開設された2年後のことです。そして、1995年には平山郁夫学長(当時)の『文化財修復センター』構想の実現に向けて、保存修復技術研究室と保存科学研究室が拡大改組され、保存修復研究領域、保存科学研究領域、システム保存学研究領域の3つの研究領域から構成される文化財保存学専攻が誕生しました。当時の大学院設置審議会の答申には、多彩な人材が集まり多面的な研究を進める専攻とする旨が盛り込まれています。
このなかで、保存科学領域は「文化財測定学」と「美術工芸材料学I」「美術工芸材料学II」の3つの講座から構成され、保存科学研究室として連携して運営しています。教員は、教授1名、准教授2名、教育研究助手2名(2024年現在)からなり、研究や学生指導にあたっています。
入学してくる学生は、人文科学や自然科学など様々なバックグラウンドを有しており、互いのキャリアを生かしつつ切磋琢磨する融合分野となっています。ここで学んだ学生は、国内外の研究所、博物館や美術館、図書館、大学などの機関や、修復会社などを中心に幅広い分野で活躍しています。
また研究室と海外機関との連携としては、敦煌研究院(中国)、メトロポリタン美術館(アメリカ)、大エジプト博物館(エジプト)、伝統文化学校(韓国)をはじめ多くの海外の博物館や美術館と、プロジェクト等を通じて共同研究や支援をおこなっています。
「文化財」は様々な材料で構成され、制作当時から年月を重ねることにより、熱や光、湿度、虫など様々な要因により変化しています。これらの要因を自然科学の眼で調査、解明し抑制策を検討するなど文化財の保存に役立てていくのが使命です。あわせて、文化財の制作技法の解明、保存環境の最適化や修復材料の開発など幅広い視点から日々研究を行っています。
このように、保存科学研究室は50年を超える歴史を有する中で、これまでの伝統を生かし発展させるとともに、常に時代の先端を見据える眼を持って新しい時代を進んでいこうと、スタッフ一同気持ちを新たにしています。